オッテンブライト醸造所
〜伝統的フランケンワインへの挑戦。ライジングスター現る〜
若き当主、クリスチャン・オッテンブライト。
幾つかの著名な醸造所で研鑽を積み、ワイン造りの技術と哲学を丹念に吸収しながら、内に秘めた“アイデア”を静かに、しかし確実に育て上げてきました。その歩みは確固たる信念に裏打ちされたものであり、2017年、家業である複合農業から自身の理想とするワイン造りへと大きく舵を切る決断に至ります。
彼が拠点とするのは、ヴュルツブルクから南東に位置するオーバーンブライト村、そしてマルクトブライト村の畑。そこは貝殻石灰岩とコイパーが複雑に入り混じる、フランケン地方の特異な土壌を持つ土地です。この地層がもたらすミネラル感と張りのある酸は、フランケンの伝統的な味筋を支える重要な要素であり、クリスチャンはその個性を余すことなく引き出すことに情熱を注いでいます。
彼のアプローチは、伝統への敬意を礎としながらも、現代的な感性と柔軟な発想を融合させたもの。土壌の声に耳を傾け、ブドウの持つ力を信じ、過度な介入を避けながら、自然と人の対話から生まれる“今”のフランケンを表現しています。
そんな彼のワインは、まずラベルで目を引きます。ファンキーで遊び心に満ちたデザインは、飲み手の好奇心をくすぐりますが、グラスに注いだ瞬間、その印象は見事に裏切られることでしょう。味わいは実直でストレート。派手さや技巧を競うのではなく、畑での丁寧な仕事と誠実な姿勢がそのまま液体に昇華されたような、静かな説得力を持っています。口に含めば、凛とした輪郭、どこか包み込まれるような奥行きと余裕、飲み手の心にそっと寄り添うような余韻を残します。
日常にそっと寄り添いながらも、どこか非日常の彩りを添えてくれるワイン。真面目さの中に遊び心を忘れないクリスチャンの心意気が、日々の食卓に小さな驚きと喜びをもたらしてくれます。